カミュの The Stranger(異邦人)を読んだ
カミュの The Stranger(異邦人):英訳を読みました。
自分の場合、英語で本を読むのは基本いつもめちゃくちゃ大変で挫折しがちなのですが、↑のような「難しい単語・文には日本語訳がついている」みたいな本を利用して、読み切りました。
感想
とても面白かったです。日本では「太陽が眩しかったから主人公が殺人を犯した」みたいなあらすじで紹介されますけど、実際はそんな感じではないかなーと思います。
それよりは「母の死を悲しんだ様子を周りに見せなかったことが裁判上での大きな争点となった物語」という方が近いかな。
短いストーリーだけにどこを書いても結構なネタバレになるのであまり詳細は書けません。あと、この小説は日本語訳が出たのが60年ほど前のせいか誤訳が多々あるため、日本語で読んでも楽しみきれないと思います。それだけに、日本でこの小説のファンが少ないのも悲しいです。
そもそもタイトルの「異邦人」ってのもピンとこないなあ、という感じです。the strangerにあたるような日本語を考えるのは難しいですけどね。ただ、やっぱ基本はstrangeな人、ということだと思っているので、「異邦」という言葉が与えるニュアンスはちょっと強すぎるかな、と。
ところで自分がこの小説を読んで、読書会とかがもし開けるなら議題に挙げたいテーマがありまして、
「どうしてマリーは獄中の主人公との面会のさい、『あなたが出たら、結婚しよう!』と言ったのか」です。
(そのシーンの英文)
She shouted again, "You'll get out and we'll get married!" I answered, "You think so?" but it was mainly just to say something. Then very quickly and still in a very loud voice she said yes, ....
主人公が 「本気?」("You think so?") と、返答すると、即答で「うん、それであなたが釈放されたら、また泳ぎに行こう」と大声で返す(周りがうるさいから大きな声を出さないと行けない)んですけど、ここのマリーの言葉の本気度については、作中では推測できる情報がほとんどないので、推測しがいがある点だと思っています。
主人公を励ますために言ったという点と、主人公のことが好きだから言ったという点には恐らく疑いようがないですけど、やっぱその辺りのグラデーションが大事だというか、つまり「本当に釈放されていたら結婚していたかどうか」が議題になって、たとえば「もし一ヶ月後に釈放されたら、結婚するのか」、「三ヶ月後だったら」、「そもそも、釈放されて冷静になったら気持ちが冷めるのか」みたく、条件を増やすと、どのように心情が変わるだろうか、という点で話し合えばたぶん盛り上がると思ってます。
まあ読書会をする機会もないんですが…。
本当に良い小説だけに、日本語訳では楽しみきれないのが悲しいです。